洗練された「Mac OS X 10.4 Tiger」と、去り行くInternet Explorer

一部のユーザーから寄せられたクリティカルな不具合報告等で、様々な物議を醸している「Mac OS X 10.4 Tiger」も、GAリリースから1週間が経過しました。私自身も、まるで腫れ物に触るような扱いで使用しておりますが、これまでのところは 大きな不具合には遭遇していない状態です。

使用時には、Spotlight、Dashboard、Automatorに目が移りがちとなりますが、何より評価すべき点は システム全般における軽快さではないでしょうか。Mac OS Xが他のオペレーティングシステム(Classic Mac OSを含む)と比較して相対的に優れている点として、一定以上のスペックを備えるハードウェアで実行している場合に、アップグレード毎にレスポンスが向上している事が挙げられるかと思います。

※一定以上のハードウェアのスペック

大凡、512MBのRAM(メインメモリー)容量、32MBのVRAM容量が最低条件か。特に、Finderにおけるグラフィックス処理を受け持つVRAM容量は重要で、Quartz Extremeの最低動作条件は VRAM 16MBと定められているが、同容量の「PowerBook G4(Gigabit Ethernet)」ではDashboardの出入時にカクっと遅れるような感じがある。

実際に、上記機種におけるコールドブートを比較してみても、「Mac OS X 10.2 Jaguar」の半分程度、「Mac OS X 10.3 Panther」の3/4程度の時間で起動しますし、Finder関連もキビキビと動作します。マウスのトラッキング速度も、昨今のHDディスプレイ等での使用を考慮したのでしょうが、速いと評価されていたPantherよりも、更に高いパフォーマンスを示していると思います。

Webブラウザーの環境とバンドルアプリケーション

至る所で応答性の高さが際立つ「Mac OS X 10.4 Tiger」にあって、特にパフォーマンスを特筆すべきは「Safari RSS」ですね。Tigerと共にアップグレードを果たし、フィードリーダーとしての機能も実装した「Safari 2.0」は RSSやATOMとの連携に目が奪われがちですが、元来のアピールポイントの一つでもあった HTML、CSS、JavaScriptの実行速度には、更に磨きがかかっています。

「Mac OS X 10.3 Panther」時代の後半にリリースされた「Safari 1.5」では、カクっともたつく感もあり、機能面も併せて考慮すると「Firefox」「Camino」にリードを許した感もありましたが、見事なまでにブラッシュアップされています。「Mac OS X 10.4 Tiger」へのアップグレードは、これだけでも価値があるとさえ思える程、Safariは高い完成度を示しています。

そして、「Mac OS X 10.4 Tiger」をインストールされた方は既にお気付きかもしれませんが、従来まで標準添付されたいた「Internet Explorer」のプリインストールが終了しています。

これはApppleのTIL(Tech Info Library)にも紹介されている通り、Microsoftによる公式ダウンロードページからバイナリーパッケージを入手してインストールすれば、一応の動作は可能なようです。しかしながら、現行GA版は最後のアップデートから大凡2年は経過している訳ですから、特にセキュリティ面でのリスクは高いと言えるでしょう。正直、Safariだけでは実用性が足りないという現状もあるので、Firefox、Camino辺りは入手しておいた方が良いかと思われます(その辺りの事情は、Safariの現状を纏めたコラムにて解説しています)。

そしてもう一つ、Mac OSプラットフォームにおける標準的なアーカイブユーティリティーとして、長年に渡ってユーザーに恩恵を齎してくれた「StuffItExpander」も収録から外れています。

Mac OS Xは以前から、Windowsで標準として位置付けられているzipフォーマットの圧縮、解凍をサポートしていますから、プラットフォーム間での互換性と利便性等を考慮して、ユーザーを導いて行く意向なのでしょう。代替えとして「BOMArchiveHelper(/System/Library/CoreServices/BOMArchiveHelper.app)」が収録されており、これはフェイスレスなシステムサービスとして提供されているため、非常に利便性が高く、且つ高速な処理が可能となっています。

zip形式は圧縮率も高く、Mac OS Xが標準として採用した事によって、今後は各プラットフォームがzip標準で統一されていく流れとなるでしょう。規格が乱立している現状を脱却できれば、我々ユーザーにとっても喜ばしい事です。

しかしながら現実的には、ダウンロードファイルをsitフォーマットで提供しているベンダーは未だ多いですから、今暫くはStuffItExpanderを別途に入手しておく必要がありそうです。

Quartz 2D Extremeについて(2005年7月4日に追記)

「Mac OS X 10.4 Tiger」では、新たに実装された「Quartz 2D Extreme」によって、レンダリング処理をGPUに任せる比率が高くなっています。ただ、この機能を生かすには「Direct X9」に対応したGPUが必要となっており、持ち得るポテンシャルを発揮させて恩恵を受けるためには、求められるハードウェアスペックも高くなってきています。